【開発ヒストリー】「軽やかさ」と「らしさ」の軌跡。〜ボブソン210ジーンズ、再び〜
ファッションは、その時代の空気や技術、作り手の想いがぎゅっと詰まっているものですよね。
1995年に生まれ、そして2025年のこの秋に再びリバイバルされる「210ジーンズ」は、まさにそうした“物語を纏うジーンズ”なのです。

1995年、「軽くて柔らかいジーンズ」は革命だった。
今でこそ、ストレッチ性のあるジーンズや柔らかいデニム素材って、当たり前のようにありますよね?
でも、当時はまだ“ジーンズ=ゴワゴワ、重い、硬い”が当たり前。だからこそ、ボブソンが「04ジーンズ」以上の“柔らかさと軽さ”を目指して開発した「210ジーンズ」は、ちょっとした革命だったんです。

「04ジーンズ」も十分画期的だったけれど、実はその上をいく挑戦が「210ジーンズ」には詰まっていたのだとか。

「ジーンズなのに編物」!? 誰もが驚いた素材の秘密
「210ジーンズ」が他のジーンズと大きく違った点――それは、なんと「編物」で作られていたこと!
通常のジーンズは、デニム生地を“織って”作る織物。
でも「210ジーンズ」は、“編んで”作られたニット素材だったんです。

ニットと聞くと、スウェットやTシャツを想像するかもしれませんが、このジーンズはしっかりジーンズの顔を持っていました。

この「編物ジーンズ」を実現するには、とてつもない努力が必要だったんです。
織物と編物って、実は製造する機械もまったく別もの。
普通なら、編物専用の工場で作るところですが、ボブソンはあえて“ジーンズの風合い”を大切にするため、「織物工場」で編物を生産しようと決めました。
ジーンズらしさって、どこか無骨で、味があって、少し手間ひまかけている感じが魅力ですよね。
その“らしさ”を失わないために、普通なら絶対にやらないような選択を、ボブソンは選びました。

職人技と調整の嵐。「織物工場で編物」を作るという挑戦
無謀とも思える挑戦には、細やかな職人技が欠かせませんでした。
たとえばミシンひとつを取っても、針の種類、送り歯の動き、バネの力加減、針の上下する高さ……すべてに微調整が必要。
ほんの少しでもズレれば、きれいな縫製ができなくなってしまうのです。
ジーンズ工場のオペレーターたちも大変でした。
今まで扱っていたのは「まったく伸びないデニム生地」。それが突然、「自在に伸びる編物素材」に変わるのです。

ミシンのスピード、手の力の入れ具合、針を入れる角度、すべてが変わる。
そうやって試行錯誤の末に仕上がった「210ジーンズ」には、他のどのジーンズにもない特別な魅力がありました。
ジーンズらしさの証。「パッカリング」と「色落ち」
ジーンズファンならきっと共感してくれると思うのですが、洗いをかけたときに出てくる白くなった部分“アタリ感”って、めちゃくちゃ大事なんですよね。
「パッカリング」と呼ばれる、あの縫い目のシワに沿った色落ちの表情――これがあると一気に“ジーンズらしさ”が引き立ちます。

「210ジーンズ」は、柔らかくて軽いのに、このパッカリングがちゃんと出るんです。
それを実現するために、素材から縫製、洗い加工まで、すべてが綿密に設計されていました。
素材の革新。「トリコチン」という名のオリジナル編物
忘れてはならないのが、このジーンズに使われたオリジナル素材「トリコチン」。

素材は、ジーンズらしさを損なわずに編物の良さ
――つまり軽さ、柔らかさ、ストレッチ性――
を引き出すために、素材メーカーとの共同開発によって生まれた特別なもの。
驚くべきことに「ドライタッチ」な肌触りで、汗ばむ日本の夏にもぴったりだったんです。
軽くて、涼しくて、ちゃんと“ジーンズ”。まさに、いいとこ取りの一着。
夏も乗り切れるジーンズだったり、高機能だったりいいこと尽くめの210ジーンズ。

技術者たちの情熱が生んだ、ひとつの奇跡
「210ジーンズ」は、単なる商品というより、ひとつの“プロジェクト”でした。
ボブソン社の枠を超えて、他社の技術者たちも協力しあい、まさに“総力戦”で作られた一本。
誰かのアイデア、誰かの経験、誰かの情熱が少しずつ積み重なって、ようやく形になった。
そして、2024年~「210」が帰ってきた。
あれから30年の時を経て、「210ジーンズ」が2024年からリバイバル。
当時を知る人には懐かしく、初めて出会う人には新鮮に映るはず。
でも、そのどちらにも共通するのは、「こんなに気持ちいいジーンズがあったんだ!」という驚きだと思います。
「ジーンズらしさ」と「快適さ」って、どちらかを取るしかないと思っていたけれど、「210ジーンズ」はそれを両立してくれました。
リバイバルされる新しい「210ジーンズ」が、また新たな物語を紡いでくれるのが楽しみです。
